霊長類有毛細胞再生研究

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研究担当者

藤岡 正人・細谷 誠

研究内容


哺乳類の蝸牛有毛細胞は一度消失すると自発的再生が起きず、このことが一度生じた内耳性難聴が回復しない一因となっている。我々は本学生理学教室との共同研究で、有毛細胞に隣接する支持細胞が、音響外傷受傷後に一過性に未分化に近い状態になると同時に、感覚上皮内で支持細胞への細胞系譜決定因子が誘導されることを見出していた。さらに我々は、米国Harvard大学との共同研究で、マウス内耳幹細胞を用いた小規模薬剤スクリーニングにより有毛細胞誘導因子を選択し、マウス音響外傷モデルにおいて蝸牛有毛細胞を体内で分化誘導させて、聴力が改善することを報告してきた(Mizutari K, 2013)。この成果を得られた一方で、過去に私たちが行ったハイスループット・スクリーニングにおいて、ヒト細胞とマウスとの間には大きな種差があることも見出していた。  本研究では臨床応用を見据え、ヒトiPS細胞由来内耳細胞を用いた薬剤スクリーニング系と小型霊長類コモンマーモセットを用いて、霊長類に特化した有毛細胞再生研究を展開する。これまでの研究から霊長類蝸牛では幹細胞マーカーや関連シグナルの発現が齧歯類とは異なることを見出しており、この基礎データを元に、シーズ探索の前臨床研究から、in vivoモデル(東京慈恵会医科大学再生医学研究部門、岡野教授との共同研究)での橋渡し研究までを幅広く推進する。得られた内耳有毛細胞再生に関する新規治療法候補をベッドサイドへと届ける出口戦略においては、バイオベンチャーや製薬企業とも積極的に共同研究を展開し、多くの患者さんがいる慢性感音難聴の臨床現場に、一刻も早く新しい治療法を提供できるよう邁進する。

参考ホームページ

「難聴に対する、薬剤を用いた内耳有毛細胞の再生医療」
(慶應義塾大学病院:慶應発サイエンス)
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/medical_info/science/201309.html

学外共同研究者

岡野 栄之(慶應義塾大学医学部生理学教室)
佐伯 翼(慶應義塾大学医学部生理学教室)
水足 邦雄(防衛医科大学校)
Albert Edge (Harvard大学)
岡野 James洋尚(東京慈恵会医科大学)
栗原 渉(東京慈恵会医科大学)
吉田 知彦(東京慈恵会医科大学)
原田 竜彦(国際医療福祉大学)

発表論文

  • 1)Fujioka M, Okano H, Edge ASB. Manipulating cell fate in the cochlea: a feasible therapy for hearing loss. Trends Neurosci, 38:139-44 2015.
  • 2)Mizutari K*, Fujioka M*, Hosoya M, Bramhall N, Okano HJ, Okano H, Edge ASB. Notch inhibition induces cochlear hair cell regeneration and recovery of hearing after acoustic trauma. Neuron 77:58-69, 2013. (*: equally contribution)
  • 3)Jeon S-J*, Fujioka M*, Kim S-C, Edge ASB. Notch signaling alters sensory or neuronal cell fate specification of inner ear stem cells. J Neurosci 31:8351-8358, 2011.(*: equally contribution)
  • 4)Fujioka M, Tokano H, Fujioka KS, Okano H, Edge ASB. Generating mouse models of degenerative diseases using Cre/lox mediated in vivo mosaic cell ablation. J Clin Invest 121:2462-2469, 2011.

サポートを受けている研究費

基盤研究B(H27〜)
挑戦的萌芽(H27〜)
基盤研究C(H25~27)
若手研究B(H23~25)

関連知財

Treating Hearing loss Edge AS, Okano H, Mizutari K, Fujioka M
U.S. Provisional Application Serial No. 61/698,475, filed September 7, 2012 PCT Serial Number PCT/US2013/058446, filed September 6, 2013, WO2014/039781 A1. 2014/03/13(米国特許、国際特許)
音響外傷難聴モデル動物の作製方法及びそれにより作製される音響外傷難聴モデル動物
特願2017-181683
音響外傷難聴モデル動物の作製用の音響暴露装置
特願2017-181755

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