3Dプリンターを用いた喉頭の3次元的モデルの作成とその臨床応用

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研究担当者

富永 健裕

研究目的

喉頭は嚥下や発声を担い、三次元的に複雑な構造を持つ器官である。我々は、過去に『コーンビームCTを用いた喉頭・気管形状の測定』を行い、二次元的解析で喉頭の位置やサイズが個人間で多様であることを学会報告した。声・嚥下機能改善手術に際し、機能に直結する手技(例;声帯内リン酸カルシウムペースト注入術におけるペースト注入部位・量、甲状軟骨形成術Ⅰ型における甲状軟骨開窓部位・挿入する素材の厚さ、被裂軟骨内転術における軟骨内転の程度、喉頭挙上術における挙上度など)は、術者の経験に基づき術中に感覚的に行われているのが現状であり、術後に十分な機能改善に至らず追加治療を要することもある。喉頭・気管の模型を製作することで、患者の軟部組織や軟骨から構成される喉頭の三次元的構造を把握し、音声・嚥下機能改善手術や気管切開術の術前シミュレーションに繋げることは有用な手段であると想定される。

2009年ごろを境に低価格フィラメント式3Dプリンターが販売されるようになり、3Dプリンターが広く認知されるようになってきた。3Dプリンターは、少量、特有の形状物の生産に適し、個別に異なる医療と相性がよい。骨や軟骨などの変形しにくい組織や、変形しない頭蓋骨に囲まれた脳などの組織は3Dプリンターでの再現性が高く、術前シミュレーションとしてすでに脳外科や整形外科、形成外科領域で応用されている。咽喉頭は、変形しにくい骨や軟骨の組織はごくわずかであり、粘膜や筋肉などの比較的変形しやすい組織が周囲を構成している。例えば喉頭鏡下微細手術では、頸部を伸展し舌を圧排挙上するという操作が加わるため、術前に撮影したCTの画像を、手術のシミュレーションに応用することが難しい。一方、甲状軟骨に収まる範囲であれば変形しにくい組織であり、経皮手術はCTを撮影した時と頸部の条件が似ているため、高い再現性が予想される。過去にも、喉頭枠組み手術に3Dプリンターの応用を試みた報告はあるが、経費の問題から実用の範囲は限局されている。

本研究では、近年医療への応用が着目されている3Dプリンターを用いて、患者のCT画像を元に個別の喉頭及び気管の模型を製作する。2種類の高度の素材の3Dプリンターを用いたりシリコーンの造形を併用したりすることで、軟部組織と軟骨からできる喉頭のより再現性の高い模型の作成を目指す(図1、図2)。製作した模型を、手術時の所見と比較することで、音声・嚥下機能改善手術や気管切開術において模型が手術シミュレーションに有用であるか検討する。複数の患者、体位や呼吸状態別に模型を製作することで、手術方法の再現性についての検証を行う。さらに、外傷や腫瘍治療後欠損した喉頭・気管の軟骨組織を三次元的に補填するための、オーダーメイド医療器具への応用についても探っていくことも目指す。

図1 プラスチック製喉頭軟骨模型図1 プラスチック製喉頭軟骨模型

図2 シリコーン製喉頭組織模型の内腔図2 シリコーン製喉頭組織模型の内腔

図3 実物の喉頭内腔図3 実物の喉頭内腔

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