持続神経機能モニタリング装置使用による聴神経腫瘍手術

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研究担当者

大石 直樹

研究内容

聴神経腫瘍手術中に現在用いられている聴覚のリアルタイム持続神経モニタリングは、聴性脳幹反応(auditory brainstem response: ABR)がスタンダードである。しかしながらその問題点として、測定に約1000回加算を要し1波形の観察に約1分を要すること、また電気ノイズで乱れやすいことが挙げられる。一方、症例によって用いられる蝸牛神経活動電位(cochlear nerve action potential: CNAP)は、測定に約200回加算(約12秒)で済むが、電極が神経上で不安定になりやすく、手術の妨げとなり広く用いられてはいない。このため、現在一般的に広く用いられている聴力モニタリングは、ABRのみであり、手術中にABRが消失した場合、聴力温存は不可能と判断されてきた。しかしながら近年、欧州では新たな術中神経モニタリングシステムとして、脳幹にある蝸牛神経背側核近傍に安定して密着する電極を作成し、直接活動電位を測定し、ノイズが少ない高性能な背側蝸牛神経核活動電位(Dorsal cochlear Nucleus Action Potential: DNAP)を用いたモニタリングが普及してきており(図1)、CEマーキングが取得され実際の臨床の場で用いられている。その特長は、測定に約100回加算(約6秒)で済み、電極が非常に安定し、また手術操作の妨げとならない、という点にある。同電極は、2016年4月に本邦でも薬事承認された。2016年6月に開催された国際学会では、聴力温存率の20%以上の改善が報告されている。

また、顔面神経機能温存に関しても、手術中に間欠的に刺激することにより、その神経伝導性が保たれているかを断続的に確認する間欠的モニタリングが広く一般的に用いられているが、手術後に一過性の顔面神経麻痺が出現し、3−12ヶ月間の回復期間を要することもまれではないのが現状である。また、持続的に顔面神経を刺激する球状の電極を顔面神経に近接させ、顔面表情筋の筋電図モニタリングを持続的に行うも報告されており、その有用性はすでに広く認められているが、電極を安定して設置することがやや困難で、移動やずれの問題があった。そのため、欧州では同様に、顔面神経の根元(顔面神経根)を持続的に安定して刺激してモニタリングができる顔面神経根刺激誘発筋活動電位(Facial nerve Root Evoked Muscle Action Potential: FREMAP)が用いられつつあり、やはりCEマーキングが取得され実際の臨床の場で用いられている(図1)。すでに顔面神経持続モニタリングの有用性自体は広く認知されているが、本臨床試験では、上記のDNAP電極と同一視野、同一システムを用いて使用することが可能な電極を用いる。電極設置の安定性に勝り、かつすでに聴力温存率の向上が報告されているDNAP電極と併用して使用可能な顔面神経持続電極を用いることは、大いに利点がある。

これらの持続背側蝸牛神経核活動電位(DNAP)電極、持続顔面神経根刺激誘発筋電図(FREEMG)電極を用いた持続神経機能モニタリング装置の使用により、聴神経腫瘍手術における神経機能温存率の改善が期待できる。

図1 実際の術中モニタリング画面図1 実際の術中モニタリング画面
左2列:顔面神経、最右列:蝸牛神経
数字(%)によってリアルタイムに神経への侵襲度を表すことができる

学外共同研究者

  • 宮崎 日出海(東京女子医大東医療センター)

発表論文

A case of presigmoid retrolabyrinthine approach to vestibular schwannoma by use of continuous direct neurophysiological monitoring of facial nerve and cochlear nerve. The Journal of Laryngology & Otology 130(S3):S217

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