老人性喉頭のリスク因子解明と治療に関する研究

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研究担当者

甲能 武幸・此枝 生恵・富永 健裕

研究内容

日本は世界一の高齢国であり、人口1.3億人に対し65歳以上の高齢者の割合は23%で、2020年には30%近くに及ぶと予測されている(国連世界人口推計2010年版)。
当院で行っている音声専門外来では、毎年400~500人程度の新規患者がおり、その中でも高齢者の割合は年々増加傾向にあり、最近の平成25年度は42.3%を占めた。その疾患別内訳で特に目立つのが、声帯萎縮症や声帯溝症といった声帯粘膜の器質的な変化を伴う病態や、音声衰弱に代表される機能性発声障害である。社会活動を続け労働力の大きな担い手となっている高齢者が増加している本邦において、このような老人性喉頭と呼ばれる疾患はQOLの低下を引き起こし、社会活動性の低下にも繋がり社会的損失も大きいと考えられる。
 自験例において、老人性喉頭患者の音声は他覚的・自覚的両側面の解析結果ともに健常高齢者と比較して有意に悪く、特にQOL評価では音声障害が社会活動性の低下に大きく影響している傾向が示唆された。現在一般的に行われている治療としては主に音声治療やコラーゲンなどの声帯内注入術が挙げられる。後者に関して治療前後のデータを比較検討すると、空気力学的に声門閉鎖を一時的に改善させる効果はあるものの、音響を改善させるには至らず、QOLの改善も十分とは言えない現状であった。
これは、声帯は表層から、粘膜・粘膜固有層浅層(Cover)、靭帯・筋肉(Body)という層構造を成しており(図1)、加齢による声帯構造の変化はその両方の容積が重複して減少しているが、現行の筋層への声帯内注入術はBodyの補強に有用であるが、物性の変化したCoverへの直接的な効果はないためと考えられる。そこで、我々は

(1) 老人性喉頭と健常高齢者の患者背景を比較することで、声帯構造の器質的変化を引き起こすリスク因子(喫煙・飲酒、併存疾患、体重変動など)を解明する。

(2) 従来の検査にコンビームCT、高速度デジタル撮像、立体内視鏡などを加えた声帯構造の3次元的評価に加え、経時的な変化という時間軸を加えた声帯の4次元的解析データを収集し、加齢に伴う声帯構造の変化の特徴を探る。

(3) 声帯のcoverに対する有効な治療介入方法について検討する。

の3点を目的として研究をすすめている。

 図1

図表出典

図1 平野実:音声外科の基礎と臨床 (耳鼻21: 239-440, 1975)

学外共同研究者

齋藤 康一郎(杏林大学耳鼻咽喉科)
矢部 はる奈(川崎市立井田病院)
宇野 光祐(防衛医科大学耳鼻咽喉科)
二藤 隆春 (東京大学病院耳鼻咽喉科)
上羽 瑠美 (東京大学病院耳鼻咽喉科)
山内 彰人 (国立国際医療研究センター耳鼻咽喉科)
後藤 多嘉夫 (東京大学病院耳鼻咽喉科)

サポートを受けている研究費

若手研究B(H27-29)

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